上記のような疑問や悩みを持つ人に向けて、この記事では6年間製造業に身を置き、製造業で独立した私が工場勤務のありのままを正直に語ります。
この記事を読めば、暑さできつい工場を辞めたいと考えるときの具体的な対処法が知れて、健康や体を壊す前に環境を変える方法がわかります。
会社は労働者を工場の暑さから守る義務がありますが、すべての工場で暑さ対策ができているとは言えません。
会社が工場の暑さ対策をしてくれない場合は、あなたの健康と将来を守るための行動が必要になります。



この記事を読んでいるあなたは暑い工場での作業にうんざりしているのだと思います。工場勤務の暑さへの対処法を知りたいのであれば、ぜひ読み進めてください。


- 加工食品の製造を生業にする職人
- 小売業→加工食品卸売業→加工食品製造業と2度の転職を経験
- 加工食品製造業6年→加工食品製造業で独立


【結論】工場の暑さに耐えられないなら辞めていい


「暑さで体力的に限界を感じているけど、辞めるのは甘えなのでは…」と悩んでいませんか?
その気持ちは多くの工場勤務者が抱えている共通の課題であると考えています。
この章ではまず、結論として「辞めてもいい」と言える理由を解説していきます。
暑さで体を壊す前に辞める決断は正しい
健康を守るために工場辞めることは、逃げではなく正しい判断であると考えています。
工場の暑さは熱中症や慢性的な疲労を引き起こし、最悪の場合は命にも関わる場合があるからです。
厚生労働省の統計おいて、職場における熱中症による死傷者数は、2023年は1,106人、2024年は1,257人とされ、年間では1,000人以上が熱中症の被害にあっています。
熱中症による死傷者数の業種別の状況では、最も死傷者が多いのが建設業、次いで製造業が多く、4年間(2020~2024年)で897人もの人が被害にあっています。



私も大事には至りませんでしたが、工場勤務中に熱中症になった経験があります。私の場合は、まず吐き気をもよおし、それから視界が暗くなり立っていられなくなりました。
夏場の労働災害の多くは高温環境が要因であり、無理に働き続けることが大きなリスクと言えるでしょう。
暑さを我慢すると労働災害につながる可能性がある
我慢して働き続けることは責任感が強いと言えますが、事故や怪我の原因になり得ます。
暑さは集中力を低下させたり、判断力を鈍化させたり、作業ミスや怪我につながるからです。



私も実際に夏の暑い時期に機械に指を挟み、爪を剥がしたことがあります。今考えると爪を剥がしただけで済み、幸運であったと思います。運が悪ければ、骨折や骨にヒビが入っていた可能性もありえますからね(汗)
暑さによる集中力低下は、労働災害の一因であると言えるでしょう。
辞める選択肢は誰にでも保障されている
労働者は「辞める自由と権利」を持っています。
理由は民法627条に、期間の定めのない労働契約は、退職の意思表示の2週間後に辞められると規定されているからです。
雇用契約は双方の合意に基づいており、耐え難い環境を変えるために退職することは合法的に認められています。
なぜ工場はこんなに暑くてつらいのか?


工場勤務の経験がある人なら、工場の暑さにうんざりした経験があるはずです。
その背景には一般的なオフィスや店舗とは異なる、工場ならではの構造的な問題があります。
この章では工場が暑いおもな理由3つを解説します。
理由①:エアコンがないから
工場には、そもそもエアコンが設置されていない場合があります。
工場の広い空間全体を冷やすには膨大な電気代がかかり、エアコンを設置することがコスト面で現実的ではないからです。



私が勤めていた加工食品工場にもエアコンは設置されていませんでした。また同業他社の工場を9件ほど見学しましたが、エアコンが設置されていた工場は1件のみでした。
理由②:工場の建物が太陽の熱を蓄積しやすい
工場の多くは建物が鉄骨や鉄板で造られているため、太陽の熱を蓄積しやすくなっています。
太陽の熱が蓄積しやすいため、たとえエアコンを設置したとしても、効果的に温度を下げられません。



実際に私が勤めていた工場では、夏場は朝8時半でもすでに30℃近くあり、朝からうんざりしていました(汗)
朝から工場内の気温が高いのは、前日の熱を工場が蓄積しているためです。
理由③:機械による熱でエアコンが効かないから
工場内の機械が発する熱は、エアコンの効果を打ち消します。
製造過程で使用する大型機械や炉から発生する熱は強力で、エアコンを稼働しても追いつきません。



私が勤めていた加工食品工場の焙煎機の周辺では、夏場で40℃を超えることもありました。
工場にもよりますが、火気設備を使う工場でエアコンを導入しても、焼け石に水であると考えています。
暑い工場で働き続けるリスク3つ


「暑いけど、もう少し我慢すれば大丈夫だろう」と思って働き続けていませんか?
工場の暑さを軽視することは、命や生活に大きな危険を及ぼします。
この章では暑い工場で働き続ける代表的な3つのリスクを見ていきましょう。
リスク①:熱中症になりやすい
暑い工場では熱中症になるリスクがとても高くなります。
大量の汗による水分・塩分の喪失と、体温調節の限界が重なるためです。
厚生労働省の統計の「熱中症による死傷者数の業種別の状況」では、最も死傷者が多いのが建設業、次いで製造業が多く、4年間(2020~2024年)で897人もの人が熱中症の被害にあっています。
リスク②:作業に集中できず怪我をしやすい
高温環境では集中力が低下し、怪我につながりやすくなります。
暑さによる疲労やめまい、判断力の低下が原因で、手元の作業ミスが増えるからです。



私が機械に指を挟んで爪を剥がしたのも、工場の暑さで判断が鈍ったためと考えています。
リスク③:効率が低下し、作業が長引く
工場の暑さによって作業効率や作業スピードが落ち、生産性が低下します。
暑さにより体力の消耗は激しくなり、こまめな休憩が必要になったり、作業スピードが落ちたりするため、通常よりも作業時間が延びるためです。



私が勤めていた工場では、夏場で機械が稼働していると40℃を超えるときがあり、どうしても水分補給の回数が増えるため、作業効率は落ちていたと考えています。
工場の暑さから労働者は法律で守られている


「工場が暑いのは仕方ない」と思っていませんか?
労働者は過酷な環境で働かされないように、法律によって一定の安全基準が定められています。
この章では具体的な規則と、会社に改善を求める際のポイントを解説します。
労働安全衛生規則第612条の2について
法律上、事業者には労働者を暑さから守る義務があります。
労働安全衛生規則第612条の2において、暑い職場で働く人を熱中症から守るために、会社が取らなければならない対策が定められているからです。
具体的には、次の2つが事業者に義務付けられています。
- 作業者が体調不良を感じたり、仲間が異変に気づいたりしたときは、すぐに報告できる仕組みを整えること
- 休憩の取り方や体を冷やす方法、必要に応じた医師の診察などの必要な措置や手順を事前に決めておき、その内容を全員に周知すること



高温環境は労働災害の発生率を高めるため、作業環境を適切に管理するのは事業者の責任です。
令和7年6月1日労働安全衛生規則が改正され、職場における熱中症対策が強化されています(参考:厚生労働省)
会社に改善を求めるときの伝え方
まずは「暑さで体調にどんな影響が出ているか」を具体的に伝えることが大切です。
事実に基づいた説明であれば、個人の感情ではなく、客観的な問題として受け止めてもらえる可能性が高まります。
「熱中症で早退した」「頭痛やめまいが続く」「工場内の温度が35度を超えている」といった具体的な例を挙げることで、上司も放置できない状況だと理解するはずです。



ただの愚痴に聞こえないように、具体的に正しく伝える工夫が大切であると考えています。
自分でできる工場の暑さ対策


会社に改善を求めるのも大切ですが、自分でできる暑さ対策もあるので、試してみることをおすすめします。
ちょっとした工夫が体調維持につながるからです。
この章では生活習慣の見直しからグッズの活用まで、実践しやすい対策を紹介します。
対策①:規則正しい生活(睡眠・食事)を心がける
十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事は、暑さに負けない体をつくります。
体調が整っていれば、暑さに対する耐性や集中力が高まるからです。
厚生労働省労働基準局では「睡眠不足、体調不良、前日の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることに留意すべき」としています。



睡眠不足や栄養不足は熱中症リスクを高める要因とされ、基本的な生活習慣の改善が、暑さ対策の第一歩とされています。
対策②:水分・塩分補給をこまめにする
定期的な水分・塩分摂取は、暑さ対策に必須と言えます。
大量の汗で失われるミネラルを補給しなければ、体温調節が正常にできなくなるからです。
具体的な水分・塩分の摂取量は、下記を参考にしてください。
定期的な水分及び塩分の摂取については、作業強度等に応じて必要な摂取量等は異なりますが、WBGT基準値を超える場合には、少なくとも、0.1~0.2%の食塩水又はナトリウム40~80㎎/100 ㎖のスポーツドリンク又は経口補水液等を、20~30分ごとにカップ1~2杯程度は摂取することが望ましいところです。
厚生労働省労働基準局「職場における熱中症対策マニュアル」
なおWBGTとは、気温だけでなく湿度、風速、輻射熱(放射熱)、身体作業強度、作業服の熱特性を考慮した暑さ指数のことです。
対策③:暑さ対策グッズを活用する
道具をうまく使うことで、作業中の負担を減らせます。
直接風を当てたり体を冷やしたりすることで、体感気温を大幅に下げられるからです。



私が工場で実際に使っていた暑さ対策グッズは、ネッククーラーと冷感タオルでした。
暑さ対策グッズを利用すると体感気温を下げられるので、体への負担が減り、作業効率が上がります。
対策④:工場内の吸気と排気を心がける
空気の循環を工夫すると、体感温度を下げられます。
外気の取り込みと排気を調整することで、熱気のこもりを防げるからです。
工場の構造により外気の取り込みが難しい場合もありますが、吸気と排気は基本的かつ効果的な暑さ対策と言えます。



私が勤めていた加工食品工場では大型の排気ファンがあったため、夏場は必ず回し、熱い空気を外に逃がしていました。
それでも工場が暑いなら「環境を変える」選択肢もある


自分でできる対策や会社への改善要望を試しても、根本的に工場の暑さが解消されない場合もあります。
その場合、心身を壊す前に「環境を変える」という選択肢を考えることが重要です。
この章では、環境を変える2つの選択肢と考え方を紹介します。
選択肢①:エアコン・空調の整った工場に転職する
エアコン・空調設備が整った工場に移ることで、暑さから解放されます。
大手工場は、労働環境改善が進んでおり、最新設備を備えているため、空調設備が整っている工場が大半です。
環境面を重視して働きたいなら、大手工場をおすすめします。
大手工場に関して、詳しくは次の記事をご覧ください。
大手工場の業務内容やメリット・デメリット、大手工場が向いている人について、詳しく解説しています。


選択肢②:別業界・別職種への転職を検討する
製造業にこだわらず、体力を酷使しない仕事に転職するのも選択肢です。
理由は長期的に安定して働けて、暑さや体力的負担から解放される可能性が高まるからです。
エアコンや空調設備完備している業界としてはIT業界、職種では事務職が挙げられます。
IT業界はITスキルを身につけられ、自分自身の市場価値を高められる業界です。
ポテンシャル採用(未経験でも将来性や人柄重視)を実施している企業が多いので、とくに20代におすすめの業界と言えます。
IT業界への転職に興味があれば、次の記事をご覧ください。


考え方:辞める決断は「逃げ」ではなく「前向きな行動」
環境を変えるために辞めるのは、逃げではなく自分を守るための積極的な行動です。
労働者はより良い環境を選ぶ権利があり、健康や将来を犠牲にしてまで暑さに耐える必要はないからです。



私は6年間エアコンなし、空調なしの工場で働きましたが、夏場のきつさは経験者でないと言い表せないものがあります。工場の業務内容にはやりがいを感じていましたが、正直「いつまでも続けられない」とも考えていました。
「工場の暑さ」に関するよくある質問とその回答
まとめ:工場が暑くて辞めたいなら、エアコン・空調完備の職場を探そう
この記事の大事なポイントをまとめます。
- 工場の暑さは構造や設備の問題が原因であり、努力や根性で解決できるものではなく、環境要因として理解することが大切です。
- 高温下で働き続けることは熱中症や怪我、生産効率の低下といった深刻なリスクを生み出すため、無理は禁物です。
- 労働安全衛生規則には高温環境への対策が明記されており、労働者は法律によって健康と安全を守られています。
- 睡眠や食事、水分・塩分補給、冷却グッズや換気改善など、自分でできる暑さ対策を取り入れることで負担を軽減できます。
- どうしても暑さが改善されない場合は、心身を壊す前に空調完備の工場や他の職種に転職するなど、環境を変える選択も重要です。
会社には工場の暑さから、従業員を守る義務がありますが、すべての工場で暑さ対策ができているとは言えません。
会社が工場の暑さ対策をしてくれない場合は、あなたの健康と将来のために、環境を変える行動を起こすことをおすすめします。
次の2つの記事が参考になると思います。ぜひご覧ください。
大手工場は労働環境の改善が進んでいるため、労働環境を重視するなら大手工場がおすすめです。


IT業界は自分自身の市場価値を高められつつ、エアコンや空調設備を完備している職場で働けます。


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